ケアのコミュニティ空間創生プロジェクトがめざすもの

基本的な考え方

 人は、自らが価値をおく生を生きることができる、簡単にいえば、自ら進んでやりたいと思うことがあり、かつそれができる状況にあるとき、もっとも生き生きとする。人は、どのような状態にあっても(高齢、障がいなど)、それを求める自由があるはずである。ひとりひとりがやりたいことを認めあい、ときに互いに紡ぎだし、実現するという目標と、この目標を可能にしていく資源(引出し)、これらの要素からなる全体を「ケアのコミュニティ」と呼ぶことにしたい。目標を可能とする資源には、ひとりひとりの健康、学び、移動の機会、さらにはこれらを背後から支える各種の公的サービス、人びとがつくるさまざまなネットワーク、励ましや助け合いといった相互行為などがふくまれる。この資源あるいは引出しは共同性のなかで創造されていくものだが、これが大きければ大きいほど、ケアのコミュニティの可能性は広がる。
 ここでいう目標についてであるが、従来はひとりひとりの健康や学びそれ自体を目標として位置づけ、これを数値化して評価することが多かった。そうではなくて、目標に位置づけられるべきなのは、ひとりひとりが引出しに入っているものをつかって何をやるのかという点である、と考えたい。つまり、人が生きるということをどう理解するかについての視点の転換を提案したい。
 CCプロジェクトのCCには、ケアのコミュニティ(Community of Care)と創造的コミュニティ(Creative Community)というふたつの意味が込められている。

ケアのコミュニティ
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どんなプロジェクトなのか

 こうしたケアのコミュニティをつくろうとする動きはすでに日本各地でみられる。「共生ケア」と呼ばれるものがそのひとつである。
 共生ケアについては、2014年9月に決定された、政府の「まち・ひと・しごと創生本部」基本方針のなかに次のような言及がある。「中山間地域等において、地域の絆の中で高齢者をはじめ全ての人々が心豊かに生活できるよう、小さな拠点における制度縦割りを排除した『多世代交流・多機能型』の生活サービス支援を推進する」。従来、高齢者は介護保険サービス事業所、障がい者は障がい福祉サービス事業所、子供は保育所という縦割り体制のもとにあったが、民家などを利用しながらこれらを小さな拠点に集約しようというものである。まずは、人口減少で施設福祉の維持が困難な中山間地・離島で、こうした動きが広がっている。こうした共生ケアのさきがけとなったのが、いわゆる「富山型デイサービス」の取り組みである。
 大切なことは、これがかならずしも財政の効率化のために考えられた仕組みではないということである。多様な生と生が出会い、交錯する小さな圏からはじまった活動、つまり富山型デイサービスが、制度を少しずつ書き換えていった結果だということである。
 そして、富山型デイサービス、最近注目されている高知型福祉、大阪市生野区の地域共生ケアをはじめとする近年の日本における取り組みを、大規模な施設福祉の整備が困難な東アジア新興国で活かすことができるのではないか、そのために東アジア新興国の農村と日本の各地域の実践をつなぐラーニング・コミュニティをつくることはできないか、というのがこのプロジェクトの基本コンセプトである。
 なお、2015年は公益財団法人トヨタ財団からの助成を受けている。

ケアのコミュニティ空間創生プロジェクト
目的
福祉関連の資源(施設・人材)に乏しい東アジア新興国の農村部で共生ケアや小規模多機能の仕組みを普及させ、東アジア新興国の農村と日本各地の実践をつなぐラーニング・コミュニティをつくる。
活動
  • ① 豊富な実践例から抽出したツールをウェブサイト上に掲載し、プラットフォーム形成の核とする(知識の共有)。
  • ② タイ、ベトナムなどの専門職、ボランティアを日本に招へいし、特色ある取り組みを視察、ワークショップを実施。これを土台に各現場で実施計画を立てる(構想)。
  • ③ 各現場で実施する(実践)。
普及ツール
  • ① 新興国の専門職。ボランティアが参照できるような、実践例を集めたブックレットを多言語で作成。
  • ② 共生ケアを機能させるための手引き(専門職と利用者のあいだあるいは利用者どうしのコミュニケーションを円滑化し、ケアのコミュニティの形成と持続を可能にするような道具)の開発。多言語化。具体的には、ICF(国際生活機能分類)とパターン・ランゲージを組み合わせたコミュニケーションツールを想定。
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